2009年01月09日 (金) | 編集 |
前に『社会脳』(岡田尊司)の概略を紹介しましたが、今回はその中から<脳の報酬>に関係する<眼窩前頭皮質><ドーパミン系>の機能についてまとめます。
・眼窩前頭皮質
・GO/NO-GO課題
・ドーパミン系
・強化学習
・母親
・報酬予測
・報酬予測誤差
・無気力
・再評価(再解釈)
・ドーパミン系と社会
・眼窩前頭皮質:
行動のブレーキとアクセルを司っていて、道徳や倫理と深く関係している。
ここが損傷・機能低下すると、非常に衝動的に後先考えず行動したり、短気で怒りっぽくなり、暴力的になる。また、本来なら喜びを味わえたことに対して喜びを感じられなくなり、医薬や関心が低下する。
大人になってから眼窩前頭皮質を損傷しても知識である程度はカバーできるが、子どものうちに損傷を受けるとその知識さえ習得できないので、事態は深刻である。
9〜11才の頃に道徳観念が根付き、自分で善悪の判断がつきはじめる。そして同時に大人が全て正しくないこともしって、反抗期になる。
・GO/NO-GO課題:
<GO/NO-GO課題>において眼窩前頭皮質が活発に働く。<GO/NO-GO課題>とは、相手が一回手を叩いたら手を叩き、相手が二回手を叩いたら叩かない、というもの。日本人若者のこの課題の成績が、20年前に比べて著しく低下している。中学生の成績が、かつての小学生低学年並み。
・ドーパミン系:
眼窩前頭皮質、腹側被蓋野、線状体側座核、前頭前野、海馬、扁桃体などをドーパミン系という。神経伝達物質ドーパミンが分泌されると、脳はそれを<報酬><興奮><快感>として受け止め、行動を促進することになる。
・強化学習:
"成功した行動パターンは、強化され、うまくいかなかったパターンは、捨て去られる。成功と失敗の体験から、その都度、行動は修正され、もっとも報酬が期待される様式を身につけていく。"
線状体側座核、扁桃体の報酬系はより原始的で無意識的なものなので、より強力で修正しにくい。一方、眼窩前頭皮質は非常に可塑性に富むので、絶えず修正が行なわれる。しかしここが損傷すると失敗を学べず、同じ事を繰り返してしまう(保続)。
・<母親>を学習する:
母親は自分の子どもを見ていると眼窩前頭皮質が活発になる。<母親>になることにも<学習>が必要。もし母親がうつ状態や依存症になっているとこの学習が行なわれず、子どもをネグレクトしたり虐待したりしてしまう。
・報酬予測:
過去の行動を起こしたときの報酬の度合いを眼窩前頭皮質が保持している。将来の行動についてはこの眼窩前頭皮質の情報が参照される。この将来予測される報酬が、<意欲>となる。
・報酬予測誤差:
予測していた報酬と実際の報酬との違いを<報酬予測誤差>という。期待していたよりも報酬が少ないとドーパミンニューロン活動が低下して報酬予測を下方修正し、報酬が多いとニューロン活動が上昇して報酬予測を上方修正する。
例えば、空腹のときにものを食べると眼窩前頭皮質が興奮するが、満腹になると低下する。眼窩前頭皮質はリアルタイムに価値を推し測っている。
・無気力:
<無気力>に陥る原因として、<伝達物質の枯渇><依存症><報酬予測の過剰な低下>が挙げられる。
<伝達物質の枯渇>の原因は過労や過剰なストレス。薬物やギャンブルなどの依存症になっていると、過剰な神経伝達物質にさらされたせいで、他のありふれた喜びを感じられなくなる。薬物、ゲームなどに溺れてドーパミン放出を人為的に増やすことが続くと、ドーパミン受容体を更に減らすことになる。
また、眼窩前頭皮質の保持している報酬予測が低く設定されすぎていると、意欲が湧いてこなくなる。
・再評価(再解釈):
泣いている女性の写真を見ると扁桃体が働く(情動的な反応)が、しかし彼女が結婚式で嬉しくて泣いているのだと説明すると、前頭前野や前部帯状回が働いて扁桃体の活動を抑える。
このように考え方を変えることで脳の活動方針が変わる。これが認知療法の背景にある。
扁桃体などの情動脳が優位になると感覚的、感情的な情報に囚われやすくなり、短期的な目的に焦点が合う。一方、前頭前野が優位なると合理的で、長期的に有利な判断・行動を生み出しやすい。
・ドーパミン系と社会:
個別に飼育したサルを群れで生活させるというモルガンらの実験によると、三ヶ月でヒエラルヒーが生じ、最上位のサルの線状体内ドーパミンD2受容体分布量が増加していた。個別に飼育されていたときから22%増、下位のサルの20%増だった。このように、ドーパミン系は社会的立場によって変化しうることがわかる。また、上位のサルは攻撃的で、頻繁にグルーミングを受け、かしずかれた。一方、下位のサルは服従的で、攻撃を甘受し、一人で過ごす時間が長かった。
ドーパミン受容体が多い個体は前部帯状回(葛藤処理中枢)がよく働く。一方、社会的に孤立した環境で育った個体はドーパミン受容体が少なくなる。
"ドーパミン受容体が少ない個体は、ドーパミンの放出を促進するような行為によりのめり込みやすく、よく動き回り、新奇なものに引き寄せられ、衝動的に行動しやすく、ドーパミン放出を引き起こす薬物をより心地よく感じて、それに依存しやすい傾向が見られる。"
"ドーパミン受容体の少ない個体は、衝動的で薬物依存にもなりやすいといえる。"
続きは次回。
・眼窩前頭皮質
・GO/NO-GO課題
・ドーパミン系
・強化学習
・母親
・報酬予測
・報酬予測誤差
・無気力
・再評価(再解釈)
・ドーパミン系と社会
・眼窩前頭皮質:
行動のブレーキとアクセルを司っていて、道徳や倫理と深く関係している。
ここが損傷・機能低下すると、非常に衝動的に後先考えず行動したり、短気で怒りっぽくなり、暴力的になる。また、本来なら喜びを味わえたことに対して喜びを感じられなくなり、医薬や関心が低下する。
大人になってから眼窩前頭皮質を損傷しても知識である程度はカバーできるが、子どものうちに損傷を受けるとその知識さえ習得できないので、事態は深刻である。
9〜11才の頃に道徳観念が根付き、自分で善悪の判断がつきはじめる。そして同時に大人が全て正しくないこともしって、反抗期になる。
・GO/NO-GO課題:
<GO/NO-GO課題>において眼窩前頭皮質が活発に働く。<GO/NO-GO課題>とは、相手が一回手を叩いたら手を叩き、相手が二回手を叩いたら叩かない、というもの。日本人若者のこの課題の成績が、20年前に比べて著しく低下している。中学生の成績が、かつての小学生低学年並み。
・ドーパミン系:
眼窩前頭皮質、腹側被蓋野、線状体側座核、前頭前野、海馬、扁桃体などをドーパミン系という。神経伝達物質ドーパミンが分泌されると、脳はそれを<報酬><興奮><快感>として受け止め、行動を促進することになる。
・強化学習:
"成功した行動パターンは、強化され、うまくいかなかったパターンは、捨て去られる。成功と失敗の体験から、その都度、行動は修正され、もっとも報酬が期待される様式を身につけていく。"
線状体側座核、扁桃体の報酬系はより原始的で無意識的なものなので、より強力で修正しにくい。一方、眼窩前頭皮質は非常に可塑性に富むので、絶えず修正が行なわれる。しかしここが損傷すると失敗を学べず、同じ事を繰り返してしまう(保続)。
・<母親>を学習する:
母親は自分の子どもを見ていると眼窩前頭皮質が活発になる。<母親>になることにも<学習>が必要。もし母親がうつ状態や依存症になっているとこの学習が行なわれず、子どもをネグレクトしたり虐待したりしてしまう。
・報酬予測:
過去の行動を起こしたときの報酬の度合いを眼窩前頭皮質が保持している。将来の行動についてはこの眼窩前頭皮質の情報が参照される。この将来予測される報酬が、<意欲>となる。
・報酬予測誤差:
予測していた報酬と実際の報酬との違いを<報酬予測誤差>という。期待していたよりも報酬が少ないとドーパミンニューロン活動が低下して報酬予測を下方修正し、報酬が多いとニューロン活動が上昇して報酬予測を上方修正する。
例えば、空腹のときにものを食べると眼窩前頭皮質が興奮するが、満腹になると低下する。眼窩前頭皮質はリアルタイムに価値を推し測っている。
・無気力:
<無気力>に陥る原因として、<伝達物質の枯渇><依存症><報酬予測の過剰な低下>が挙げられる。
<伝達物質の枯渇>の原因は過労や過剰なストレス。薬物やギャンブルなどの依存症になっていると、過剰な神経伝達物質にさらされたせいで、他のありふれた喜びを感じられなくなる。薬物、ゲームなどに溺れてドーパミン放出を人為的に増やすことが続くと、ドーパミン受容体を更に減らすことになる。
また、眼窩前頭皮質の保持している報酬予測が低く設定されすぎていると、意欲が湧いてこなくなる。
・再評価(再解釈):
泣いている女性の写真を見ると扁桃体が働く(情動的な反応)が、しかし彼女が結婚式で嬉しくて泣いているのだと説明すると、前頭前野や前部帯状回が働いて扁桃体の活動を抑える。
このように考え方を変えることで脳の活動方針が変わる。これが認知療法の背景にある。
扁桃体などの情動脳が優位になると感覚的、感情的な情報に囚われやすくなり、短期的な目的に焦点が合う。一方、前頭前野が優位なると合理的で、長期的に有利な判断・行動を生み出しやすい。
・ドーパミン系と社会:
個別に飼育したサルを群れで生活させるというモルガンらの実験によると、三ヶ月でヒエラルヒーが生じ、最上位のサルの線状体内ドーパミンD2受容体分布量が増加していた。個別に飼育されていたときから22%増、下位のサルの20%増だった。このように、ドーパミン系は社会的立場によって変化しうることがわかる。また、上位のサルは攻撃的で、頻繁にグルーミングを受け、かしずかれた。一方、下位のサルは服従的で、攻撃を甘受し、一人で過ごす時間が長かった。
ドーパミン受容体が多い個体は前部帯状回(葛藤処理中枢)がよく働く。一方、社会的に孤立した環境で育った個体はドーパミン受容体が少なくなる。
"ドーパミン受容体が少ない個体は、ドーパミンの放出を促進するような行為によりのめり込みやすく、よく動き回り、新奇なものに引き寄せられ、衝動的に行動しやすく、ドーパミン放出を引き起こす薬物をより心地よく感じて、それに依存しやすい傾向が見られる。"
"ドーパミン受容体の少ない個体は、衝動的で薬物依存にもなりやすいといえる。"
続きは次回。
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